新刊紹介 大谷信介・木下栄二・後藤範章・小松洋・永野武編著
 『社会調査へのアプローチ』


 本書は「社会調査法研究会」を結成した五名の著者が編んだテキストである。基本的な3部9章と、実習用の1部4章から成り立っている。
 まず、第T部「社会調査の論理」では、社会調査の基礎として、社会調査の概要・歴史の説明、情報収集の基礎(図書館やインターネットでの検索、国勢調査などの利用)、 概念、変数や仮説という重要語句が解説されている。
 第U部「調査票調査の方法」は、本書の中核となる部分である。社会調査において、これまでもっとも重要視されてきた調査票調査の概要に関して、種類と特徴の説明、質問文の作成からサンプリング、得られた調査結果の分析方法などが、調査の手順に沿って述べられている。仮説検証のために質問項目はどう作成すべきかという部分は、具体例を挙げて一つ一つ検討している。とくに、曖昧な語句や誘導的質問などの不適切な例、相互排他的で網羅的な選択肢の作り方は非常に詳しく説明されている。また、サンプリングの基本的な考え方や、標本誤差、データ化作業、度数分布表やクロス集計表の分析なども、実例を挙げながら述べられている。
 第V部「質的調査の方法」では、聞き取り・参与観察・ドキュメント分析の三つについて説明されている。在日中国人への聞き取り調査・市議会報の分析・写真観察法などの例も分かりやすい。第W部「補習と実習」は、ある学生の調査の経緯がまとめられ、さらに、基礎統計量とχ2検定の方法、非参与観察法つまり日常的事象の観察についても説明されている。
 評者は本書の優れた点として、統一性とバランスを挙げたい。筆者たちは自らの講義内容や従来のテキストの問題指摘から叩き台を作り、月平均二五回のメールのやり取りや、二四回におよぶ研究会での議論から原稿を執筆した。全てに共同で責任を負う「担当執筆制」が統一性を生み出したのであろう。また、従来のテキストは調査票調査の説明に終始するものが多かった。一方、近年ライフヒストリーや参与観察などのテキストも編まている。本書はその中間的位置にあり、一冊のテキストで量的・質的調査がバランス良く説明されているので、読者は社会調査全体を鳥瞰できるだろう。調査票調査に関する統計学的説明がもう少し必要だと思うが、全体の分量を考えると、無い物ねだりかもしれない。社会調査を始める人にお勧めしたい。
                         (ミネルヴァ書房、一九九九年、二五〇〇円+税)


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