現代学生の宗教意識
−一九九五〜七年のアンケート調査の分析-

一、本節の目的

 本節は三年間の調査結果について、次の二点をまとめたものである@。すなわち、「宗教の一致」及び、信仰を持っている者と宗教に関心のない者との「超常現象」などに対する意識・態度などの比較である。
 前者の「宗教の一致」というのは「回答者本人の宗教・父の宗教・母の宗教」それぞれが一致しているのか、また「家の宗教」と一致しているかどうかを見ていくものである。本調査では毎回、回答者に自らの「家の宗教」及び、本人と父・母が信仰を持っているかどうか尋ねている。これまでの報告書では各々の回答における基礎資料は提示されているが、その連関は明らかになっていない。そこで、それらがどの程度一致しているかを分析したのである。また、代表的な宗教は調査票に提示してあるが、その他どのような宗教を回答者やその両親が信仰しているのかを自由記述で確認したので、それも示しておこうA。
 後者の比較は、「超常現象」に関して三年間共通して用いられた質問項目に着目した。本調査では年ごとに質問項目を変えているものと変えないものとがある。超常現象に関しては、一部の項目を変更しつつ尋ねているが、三年間通して同一の質問項目もある。筆者はその結果、年度ごとにどのような推移を示しているのかを確認した。全体像は三年間の調査報告を並べれば分かるので、本稿では特に、信仰を持っている者と宗教に関心のない者の二者の比較を試みたB。さらに「超常現象」項目以外の、九七年で質問したオウム真理教報道に関する態度について、この二者の比較を行った。
 なお、議論に入る前に若干の自己反省を行っておかねばならない。
 というのは、本調査において用いている「家の宗教」概念は、回答者の間でかなり曖昧に使用されていることが、筆者の分析の際に明らかになったからである。複数回答の多さがそれである。九七年では「家の宗教」として一人で五つの宗教を記述している回答もあった。この例で言うと、家族員それぞれが個人的に異なる信仰を持っており、それに対応させて「家の宗教」としていたことが判明している。また、他にも両親の個人的信仰に加え、父方母方双方の墓地のある寺院の宗派を書く者もいる。家庭内にある宗教施設である神棚や仏壇から「神道と仏教」と答える者もいる。この回答者ごとの認識の相違を指摘せずに、「家の宗教」を論ずることはできない。
 これまでの調査報告では、「家の宗教」は「複数回答」であることを明示した上で、神道・仏教・キリスト教・新宗教・その他不明・無回答などに区分して、総計と全体の割合が記されている。例えば、九七年は有効回答五七一八名に対して、「家の宗教」回答総数は五七六一件であり、無回答やその他不明を除くと三三九○件が具体的な宗教名の合算となっている。だが、今回筆者が自由記述になっている回答を分類し直した上で数え直すと、三四四八件だった。これは複数回答、特に調査票に示されていない宗派を欠損値として扱ったことに起因すると思われる。

二、宗教の一致
 本調査の調査票では、「あなたの『家の宗教』がありましたら、『宗教名一覧表』の中から選んで、記号または具体的名称を書いて下さい。2つ以上ある場合は、すべて記入して下さい」とされていたC。そこで、「家の宗教」はないと認識している回答者は「なし」と書く場合と、その箇所を空白にする場合が考えられる。そこで、「家の宗教」を「なし」との記載があったものと無回答を合算してみる。すると、九五年が六六%、九六年が三八%、九七年が四一%であった。九五年の多さが目につくが、これはそれ以上分析不可能である。
 本節では以下、「家の宗教」として記述されているもののみを分析で扱う。では、「家の宗教」は何が多いのかを表1で確認しよう。九七年の回答数が三○を上回るものを多い順に示したのが表1である。筆者は、自由記述で「たぶん○○か××」としたものも不確実ということで「不明」として処理した。具体的な宗派ではなく「仏教」と答えた者が二○%以上もいることが注目される。「仏教」寺院との関連は認識しても、その具体的宗派まで分からないということが、「家の宗教」認識の特徴であろう。だが、一方では、明確に具体的宗派を記している者も多い。浄土真宗がもっとも多く二六.一%、続いて曹洞宗九.七%である。創価学会も六.五%と多い。また、キリスト教は新旧両教派を合算しても二%に止まる。
 次に、個人の信仰について確認しておこう。今回は表を掲載していないが(三回分の調査報告参照)、「信仰を持っている」回答者本人は、九五年二五一名(六.七%)、九六年三三○名(七.六%)、九七年六六九名(一一.七%)であった。「父が信仰を持っている」割合は、九五年二八○名(七.四%)、九六年三三三名(七.七%)、九七年六四三名(一一.二%)であった。「母が信仰を持っている」割合は、九五年四○一名(一○.六%)、九六年四七九名(一一.○%)、九七年七九八名(一四.○%)であった。
 いずれの年も父より母の方が三%以上高く、子である本人よりも親の方が高い。また、九七年がいずれも三%以上高いが、これは、宗教系学校の回答者がそれ以前と比べて増加しているためと推察される。これらの宗教は一致しているのか異なっているかを見ていこう。
 そこで、この回答者本人・父・母の三者(以下、三者と略す)において、それぞれ宗教名が記載されている三三八件について、宗教一致度を見たのが表2である。一致している数が多いのは、創価学会(三四.三%)・浄土真宗(一八.三%)・天理教(一三.六%)・曹洞宗(七.四%)の順になっている。「家の宗教」の割合(表1)と比較して、新宗教である創価学会と天理教が多くなっている。また、「家の宗教」としては仏教各派を挙げても、それが三者個々人の共通した宗教にはなっていないことが分かるだろう。さらに「仏教」という回答が少ないこと(二.一%)は、「家の宗教」は「仏教」と認識していても、三者の個々人の宗教には具体的は宗派を挙げていることから説明できる。
 また、父親と母親だけ、父親と本人だけ、母親と本人だけ、という三つの組み合わせについても一致度を確認したが、これは概ね、表2の三者における一致度に近い結果であった。ただ、母親と本人だけにおいて、キリスト教(プロテスタント四.三%、カトリック三.六%)が若干多かった。
 次に、家の宗教と個人の宗教の一致度を見ておこう。表3は回答数が二○を越える宗教について、それぞれの個人の宗教が家の宗教と一致しているかどうかを割合で示したものである。まず、創価学会と天理教における一致度が極めて高いことが注目される。次に、「仏教」と挙げる者より、個別の宗派を挙げた場合の方が概ね一致度が高い。神道やキリスト教新旧両教派においては、本人の宗教が父や母より一致度が高かった。

三、信仰を持つ者と関心がない者の比較
 ここでは、(a)信仰を持っている者と、(b)信仰はもっていないし宗教にも全く関心がない者を、年度ごとの回答で比較してみる。その際、それぞれの項目について、回答者全体との比較もできるように表に付け加えておいた。

(一)超常現象についての年度別比較
 表4から表6までは、三年間同じ質問をした「超常現象」に関する三つの項目について、「信じる」(○○)「ありうると思う」(○)「あまり信じない」(×)「信じない」(××)の四件で回答された割合が示されている。肯定「(○○)と(○)を合算した割合」について見ていこう。
 表4の通り、「宜保愛子の霊視」に関しては(a)も(b)も毎年肯定が少なくなっている。(a)は三六.五%→二九.二%→二三.二%と大きく下がっており、(b)も二一.四%→二○.四%→一七.六%と下がっている。だがいずれも(a)の方が肯定の割合が高い。
 表5によれば、「ノストラダムスによる一九九九年の終末予言」は(a)一八.一%→一八.○%→一六.六%、(b)は→二四.二%→二一.○%→一九.七%とやや減っている。また、この項目については、(b)の方が割合が高い。
 表6によれば、「臨死体験」は(a)七二.○%→七○.五%→六四.六%、(b)六○.七%→五九.四%→五三.三%、とやや減っている。この項目は他の二つに比べ、全体的に肯定が高く、特に(a)の肯定は常に(b)を一○%程度上回っていた。
 なお、いずれもカイ2乗検定では有意であった。

(二)オウム真理教報道(九七年)
 九七年調査では「現在、あなたはオウム真理教についての報道に対して、どれくらい関心がありますか。次の中から選んで下さい」という質問をした。この質問の回答の選択肢は「非常に関心を持っている」(○○)「多少関心を持っている」(○)「あまり関心を持っていない」(×)「関心はない」(××)の四件であり、表7に結果を示した。
 前項と同様に肯定を合算すると(a)は七九.四%で(b)の五八.八%と比べると明らかに高い。地下鉄サリン事件から二年以上経過して、事件の風化が語られることが多いが、信仰を持つ者と関心のないという者の差異が明らかであろう。またカイ2乗検定では有意であった。

四、小括
 すでにそれぞれの項で示したが、本節を簡潔にまとめると次の通りである。
 本人・父・母の宗教一致度は、創価学会・浄土真宗・天理教などが特に高い比率であった。また個人の宗教と「家の宗教」の一致度を見てもこれらは高く、特にこれらは、一家揃って同じ信仰を持っていると言えよう。一方、「家の宗教」として「仏教」を挙げても個人の信仰とは一致せず、また、神道やキリスト教は、三者とも一致することは多くなかった。
 信仰を持つ者と宗教に関心のない者の比較は、超常現象に関しては「宜保愛子の霊視」と「臨死体験」は前者の、「ノストラダムスの終末予言」は後者の、肯定の度合いが高いことが統計的有意で示された。オウム真理教報道については、前者の関心の高さが示された。
 今後、調査法についての議論も行い、さらにさまざまな角度からの分析を試みたいと思う。


@本稿の分析はSPSSを使用した。またその際、藤本隆史氏(上智大学大学院文学研究科社会学専攻)に適切な助言をいただいたので、記して謝したい。
A回答者は、宗教名を記載する場合、詳しく分からないときは、仏教・キリスト教などをB、Cなどと記してもらうようにしてある。分かる場合は「宗教名一覧表」を参照してもらってCC、BDなどの記号で記載してもらっている。その宗教名は、神道、仏教(浄土真宗・浄土宗・曹洞宗・日蓮宗・真言宗・臨済宗・その他の仏教宗派)、キリスト教(プロテスタント・カトリック・エホバの証人・その他のキリスト教)、創価学会・霊友会・立正佼成会・天理教・真如苑・幸福の科学・崇教真光・その他の宗教、宗教の名称が分からない、に区分されている。九七年調査の「家の宗教」では、日蓮正宗、天台宗、禅宗、金光教、生長の家、霊波之光教会、末日聖徒イエス・キリスト教会などを回答する者が複数いた。個人の宗教はそれ以上にヴァラエティに富んでいた。
Bこの比較は、井上順孝「学生における宗教および超常現象・神秘現象への関心」(『國學院大學日本文化研究所紀要』七八、一九九六年)を参考にした。
C本年実施した九八年調査では、「家の宗教」を「ある」「なし」で区分した後、ある場合にその宗教名を記載してもらう形式になった。

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