論文の目次と要旨(概ね200字) (06.07.24 最新論文を掲載)

2.学位論文

代キリスト教信徒にとっての死者儀礼−大森めぐみ教会の事例を中心として
要旨(400字×12枚)
01  本論文の目的は、現代の日本においてキリスト教がどの程度受容されているかという問題点に関して、死者儀礼という面からアプローチしたものである。
 まず、死者儀礼という用語の定義をしておく。本論文では単なる葬式のみを指しているのではない。葬式・記念会・墓参等を含めた広い概念で使用している。類似の用語としては先祖祭祀や祖先崇拝が挙げられる。これらの用語は、単に死者を追慕するのではなく、亡くなってから祖霊となるまでの供養の側面があり、その霊は祟るもの或いは子孫の繁栄の為に加護をもたらす守護神的存在であるという認識を含んでいる。しかし、キリスト教ではこれらは到底認められまい。そこで、中立的概念として死者儀礼をそれと対応する用語として使用しているのである。
 現代において、キリスト教は年中行事(クリスマス)、通過儀礼(結婚式)、教育(キリスト教主義学校)等での、いわゆる文化的受容はなされていると見なせるだろう。しかし、実際の信徒数はいまだに総人口の1%弱で推移している。旧教の渡来から400 年、新教の渡来からでも100 年を経た現在、信徒数が大きく伸びていないキリスト教信徒が、死者儀礼といかに関わっているかを考察することは適当だと考える。なぜなら、例えば死者の埋葬をめぐって、江戸末期には浦上四番崩れという事件がおきた。明治初期にも仏壇を投棄したり、キリスト教式の葬儀実行にともない裁判を受けたりと、それまでの死者儀礼のやり方と対峙しているケースが顕在化していた。一方、現代ではそのようなことがあまり公けになっていないように感じられる。しかし、それは消滅したからではなく潜在化しているからかもしれない。そこで、一つの教会における調査を事例にして、現代のキリスト教信徒が、死者儀礼とどのように関わっているかを考察していくのが、本論文の大きな目的となるのである。
 方法としては、調査票をもとにした数量分析(以下「会員調査」と呼ぶ)が主である。これは森岡清美成城大学教授と磯岡哲也淑徳大学助教授が作成し、1991年9月下旬に配付し、郵送で返送された。210 名の有効回答数を得、有効回答率は61.8%であった。この調査の主たる目的は教会教育の成果を確認することにあり、その点については森岡教授が岩村牧師と共著で報告書を出版されるのでここでは割愛し、本論文では死者儀礼に関する部分に焦点をあてる。
 一方で、筆者の中心的関心は信徒が抱えている問題点にあり、各人により事情が異なってくるため、数量分析では捉えきれない部分がある。幸い仏壇に関する座談会が92年4、6月に行われ、それぞれ27名、33名の出席者があった。そこでの話題から、筆者は座談会データというものを作成し、また個別に面接して補充した。これにより、先にみた全体の分析に加え、具体的な質的分析を行ったのである。
 さて、事例として取り上げた大森めぐみ教会は、新教の中でも多数の信徒を擁する日本基督教団に所属する東京教区の教会である。同教団所属の都内277 教会の中では、現住陪餐会員数で上位9番目(92年3月31日現在)である。岩村清四郎、信二牧師が親子2代にわたって教会教育を実践してきており、創立65年を越える教会である。
 以下、分析考察について記述するが、本論文では死者儀礼を考察すると言っても、特に仏壇や墓地という宗教施設と先祖観についてを分けて考えていく。
 さて、「会員調査」によれば、32%の世帯では仏壇を保持している。他の教会で同様の調査がなされていないので、この率が高いか低いかは一概に言えない。しかし、この調査における神棚の保持は8%であることから、家庭内の宗教施設では仏壇処理の問題が信徒にとってより大きいものであると言えよう。 キリスト教信徒として初代か2代目以上かという点は重要である。というのは、初代ならばその上の世代は非信徒(一般には仏教徒であることが多い)であり、それまで行われてきた宗教儀礼や現存する施設との対応に悩むことになるだろう。しかし、2代目以上では宗教的家庭環境が整い、上記のような問題点は少なくなるのではないか。初代で仏壇がある人は43%、ない人は57%、2代目以上ではある人11%、ない人89%で、この予想が裏打ちされた。また、仏壇を処理した人は初代が12名、2代目以上が3名で、仏壇に関する問題は初代の信徒におけるものであると言えよう。
 家の宗教を聞いたところ、仏壇がない人は64%がキリスト教、7%が仏教、26%が家の宗教なしであった。仏壇がある人は37%がキリスト教、57%が仏教、6%が家の宗教なしであった。これにより、仏壇有無が家の宗教に関係することが推定される。
 座談会データにより、31名の具体的事例を見ていく。まず、その契機は継承と創設という二つに区分される。創設した者のうち受洗後にという2例では、「親や祖先を思う気持ちを形に表したくて設置。兄弟や子供が盆、正月に仏壇の前に集まり、O家の拠り所になっている」「義父の遺骨を祀る場所がないので義母が購入。祖先が仏教徒だったので、尊ぶ精神の表れである」と述べている。
 また、仏壇がある人の中で親と同居している場合は6名すべてが何らかの世話をしており、死別している人11名69%が世話をしているが、5名31%は世話をしていない。
 仏壇を処理した人に契機を聞くと、別居(結婚、転居)・管理者の死亡・受洗・火事が挙げられた。積極的な処理としては受洗によるものが挙げられるが、今回は全て世帯主の受洗により処理できたというものであった。仏壇は継承された場合、特に近親が厚く世話をしていたものなら心情的に処理しにくくなろう。
 キリスト教祭壇により代替するという方法があると筆者は考えるのだが、記念コーナーというような形で写真や十字架を置く世帯は27%あるのに対し、祭壇は5%しかないのであった。家庭内宗教施設においては仏壇の残存と祭壇設置の少なさが問題点として挙げられる。
 さて、家庭外宗教施設について、墓地の考察をしていく。まず、東京教区の75教会について教会墓地を保持しているかどうか、予備的調査をしたが、77%が保持していた。しかし、大森めぐみ教会のように教会敷地内に墓地を保持する例は3例のみであった。多くは既存の霊園に専用の区画を墓地として使用している。冨士霊園など郊外にある霊園を保持している教会も多い。また信徒数が251 名以上の教会では19教会全てが墓地を保持していた。
教会敷地内に納骨堂を持つ大森めぐみ教会は、他と比べて恵まれた方であるが、ロッカー式が200 個あるうち利用数59個(30%)と少ない。それは、墓地のある82%の教会員はすでに、仏教の墓地(41%)や、無宗派の墓地(34%)を持っているからだと言えよう。墓地を改葬したという例は少ない。生前購入のパターンとしては、教会の納骨堂予約の他に、無宗派霊園購入が多い。それは、「祖父母は真宗のお寺に、父母はめぐみ教会にというのでは、子供が面倒だし、ややこしいでしょうから、両親も私たちも宗派に関係なく入れるところを確保したい」という話に代表されると思われる。墓地は継承を前提に考えているのである。しかも、クリスチャンホームでない(それを目指ささない)ケースでは、無宗派こそが衝突のおきない理想の墓地ということになる。
 さて、キリスト教信徒に大きく影響してきたのは、仏教様式の死者儀礼であるが、その基底には日本人の先祖観があると思われる。そこで、孝本貢等の研究に依拠しつつ、現代の先祖祭祀というものを見ていこう。
すると、伝統的な「家」を維持継承していくための規範的・守護神的な機能から、夫婦家族制が一般的となった現代では状況適合的・思慕的な機能へと変容していること、しかし、なお「間人主義」的な人間観があるため先祖祭祀自体は維持されていることが指摘された。
 筆者は維持されている点に注目し、これが現代のキリスト教信徒にも影響を与えていると考える。「会員調査」の「祖先を敬い、記念することは、大事なことと思うか」という質問に対して、85%の人が賛成している。先に見たように、仏壇を保持している理由として、故人が仏壇を大切に扱っていたことや故人を記念するために、仏教徒の親族のためにといったことを挙げている信徒がいる。そこには世間一般の人と同様に、先祖への思慕・敬意の場所として仏壇が存在しているという点で肯定的に捉えている例もある。ただ、68%は仏壇がない生活を過ごしているわけだから、彼らだけあるということについてはは更に考察を深めねばならない課題である。
 牧師の方では毎月第一日曜に行う死者のための祈りや納骨堂の設置などによって、死者儀礼にキリスト教的意味付けを行って信徒に提示している。しかし、信徒自身は先に見たとおり、現実的な処理をするケースが多く、牧師の意味付けを必ずしも忠実に実践しているとは言いがたいのが現状である。
 農村部におけるキリスト教教会の土着化に関する調査は1950年代から70年代にかけて幾つか行われてきた。しかし、都市部に関するそれは殆どない。よって、上記のように考察してきたことは、他の調査によって比較し、より深めていくことが望まれる。また、旧教の教会についても当然視野に入れていかねばならないだろう。これらが、今後の課題となっていく。


3.学術論文

サブタイトル付き題目
26 キリスト教会を継ぐ者の語り―〈牧師夫人〉の母から娘へ
目次 はじめに
1.本論の射程
2.先行研究の整理
3.教会を継ぐ〈牧師夫人〉
4.考察
おわりに
要旨 福音派のある教会の現〈牧師夫人〉とその娘で次世代の〈牧師夫人〉、2人へのライフヒストリー・インタビューをもとに、信仰の継承、教会の継承を考察した。また、筆者が従来より指摘してきた〈牧師夫人〉が抱える問題点を検証した。
25 ライフヒストリー・アプローチと宗教社会学
目次 1.社会学としてのライフヒストリー
2.宗教研究としてのライフヒストリー
3.本書の立場
要旨 『ライフヒストリーの宗教社会学』全体を貫く基本的な視座を説明した。
24 〈共働の宗教指導者〉に関する一考察−キリスト教と仏教を中心に
目次 はじめに
1.問題の所在
2.「宗教とジェンダー」に関する若干の整理
3.〈牧師夫人〉の役割葛藤
4.〈住職夫人〉の役割葛藤
5.二元的リーダーシップと〈共働の宗教指導者〉
むすび
要旨 新宗教研究で提出された「共働の教祖」概念を発展させ、キリスト教や仏教における〈牧師夫人〉や〈住職夫人〉が抱える役割葛藤を検討した。そして〈共働の宗教指導者〉概念を提出した。
23 都市・郊外化地域の寺檀関係に関する予備的考察
目次 1.問題の所在
2.寺檀関係を考察する4つの視点
3.先行研究による事例分析
4.おわりに
要旨 曹洞宗宗勢総合調査を出発点に、「郊外化」と寺檀関係を考察するための4つの視点を提唱した。
22 大学生たちが体験したキリスト教−社会調査実習を中心に
目次 1.本稿の課題
2.授業と報告書の概要
3.調査の内容
4.現代日本社会とキリスト教
要旨 大学までキリスト教と出会ったことがないという大学生たちと共に行った社会調査実習および報告書作成を通じて現代日本社会におけるキリスト教の問題点を考察した。
21 牧師にならなかった<牧師夫人>−妻・母・教会内外の役割と葛藤
目次 1.ある事件から
2.牧師と〈牧師夫人〉の仕事
3.4つの局面における〈牧師夫人〉
4.まとめ
要旨 筆者が続行している〈牧師夫人〉調査にもとづく論文。牧師資格を持ちながら牧師ではなく〈牧師夫人〉としての活動を続ける2人の事例を中心に〈牧師夫人〉の抱える問題を再検討した。
20 学びの基礎力養成のために−「大学での教養教育を考える会」の取り組み
19 キリスト教会の日本社会への適応−東北・関東の教会墓地を中心に
目次 1.問題の所在
2.死者儀礼について
3.教会墓地の多様な実態
4.小括
要旨 死者儀礼のさまざまな対応について、主に東北・関東で行った様々な教会の事例をもとに考察した。
18 昭和前期の宗教世界−荒川区の事例より
目次 1.問題の所在
2.荒川区の概況
3.宗教史的背景と本資料の位置
4.資料の概要
5.分析
 (1)代表者と信徒
 (2)結社の建造物
6.若干の結論
要旨 荒川区で実施した民俗調査の資料をもとに、かつてこの地域にあった宗教結社についての考察。
17 短大生による社会学の実践−写真観察法レポートの試み
目次 1 はじめに
2 社会学講義
 2-1 教養科目としての位置づけ
 2-2 講義概要
3 写真観察法
4 レポート
 4-1 事前の説明
 4-2 全体の概略
 4-3 事例
 4-4 他者の視点
5 若干のまとめと今後の課題
要旨 一枚の写真に300字程度の社会学的なコメントを付け、「現代都市を写真で語る」というテーマでまとめる「写真観察法」レポートを事例として扱った。そして、筆者自身の教養科目「社会学」講義について考察した。レポートにおいて、受講生たちが使う「社会学」用語には限りがあるものの、取り組みの成果を5点ほど扱い、さまざまな資料を踏まえてのコメントであることを確認した。そして、社会学を「実践」することや、写真の撮影者とその後の観察者との視点の違いなどを、作品を巡る短大生たちの意見交換などから明らかにして、社会学を学んでいくことの有用性を示した。
16 キリスト教受容の現代的課題−死者儀礼、とくに墓地を中心に 要旨400字
目次 1.問題の所在
2.受容の類型に関する先行研究
 (1)森岡の4類型
 (2)武田の5類型
3.死者儀礼に関する3類型
 (1)拒否
 (2)容認
 (3)変換
4.教会墓地への「変換」型対応
5.信仰の継承
6.おわりに
《 キーワード 》 キリスト教受容、死者儀礼、教会墓地、拒否・容認・変換、信仰の継承
要旨  本稿は、キリスト教受容研究で詳しく検討されなかった死者儀礼、とくに教会墓地の問題を扱う。教会墓地の多くは一九七○年代以降に完成しており、従来の研究では議論されなかった課題である。分析に先立ち、森岡清美や武田清子の受容類型を批判的に検討した。そして、教会・信徒の先祖祭祀への対応を「拒否・容認・変換」に三分した。多くの教会では、儀礼にキリスト教的意味づけを見出す「変換」の対応をとる。だが、信徒たちは、自らの状況次第で先祖祭祀を「容認」してしまうこともあり、「拒否」の対応をとる教会は孤立している現況も見出された。また、墓地を各家族の宗教施設と考える信徒の場合、無宗教霊園などにイエ墓を保持する傾向もあった。「イエの宗教化」も「クリスチャンホーム化」も推進されない点を鑑みると、現代日本のキリスト教は、「個人の信仰」として定着しており、墓の継承のみならず、信仰の継承が大きな課題であることが判明した。
15 信者とその周辺−クリスチャンの自分史を中心に (要旨400字×4枚)
目次 1.クリスチャンはどこにいるのか
2.信者とは誰のことか
  1 信者になるということ
  2 「信者」類型
3.事例研究
  1 自分史の方法論
  2 事例
    (1)継続信者
    (2)断続信者、信者周辺、非信者
4.信者とその周辺
要旨  本稿は、「信者」概念そのものを議論の俎上におき、その意味を構築し直すこと、さらに、「信者」自身が自らの人生を紙上にて再構築した自分史という資料をもとに、とくにキリスト教に関する考察を進めた。
 これまでの宗教調査では、主に教団・教会における「熱心な信者」へのアプローチが中心だった。それは信者に対する調査自体が、教団・教会の協力なしには進めにくいという方法的な制約もあったろう。だが、もっと大きい理由として、研究者側の視点が、信仰するかどうかという主観的な問題に対して、客観的基準となる教団・教会の所属により「信者」かどうかを区分していたことにあるだろう。たしかに、教団や教会が「信者」と見なしている人々は「信者」と言えるのだろう。だが例えば、教団や教会に以前は属していたものの、さまざまな事情で離れてしまった人々は「信者」とは言えないのだろうか。逆に、教団や教会に属する機会を持たなかったものの、自らはある信仰を持っていると思っている人々は「信者」とは見なせないのだろうか。たぶん、読者の多くは、それらの人々は「信者」だと認めるだろう。
 さらに、現実の「信者」は必ずしも同じ位置に止まるわけではない。「信者」は、自らのライフコースを歩むなかで、「信仰グラデーション」の濃い色(熱心な信者)から薄い色(教団から離れたり、その教えを信じられない時期の者など)まで、行き来している場合もあるだろう。
 ただし、「グラデーション」の濃淡ということでは曖昧で議論がしにくい。本稿では、ある程度明確な区分を検討した。そして、先行研究者たちの議論を踏まえ、「(継続・断続)信者」「(教会内・教会外)信者周辺」「(接触・非接触)非信者」という6つの理念型を提出した。
 これらの議論を前提に、自分史を用いた事例研究を試みた。自分史は、1980年代以降、無名な市井の人々によって書かれるようになってきた個人史のことを指す。執筆者が自らの無数にある人生上の出来事のなかで、本人が重要だと思われる出来事を自分自身で取捨選択し、それらを主観的に連関させてまとめている点が大きな特徴である。その特徴を生かして、信仰に関する記述を中心に読み取ろうとした。
 なお、事例はキリスト教を扱っている。いろいろな宗教のうち、キリスト教を選択した最大の理由は、日本のキリスト教受容があまりにアンバランスだからである。クリスマスやチャペルでの結婚式などばかりでなく、キリスト教系学校やキリスト教文学・音楽などは広く浸透している。にもかかわらず、キリスト教の信者は決して多くない。このギャップを探るためには、教会から離れた経験のある人や、離れてなおかつキリスト教信仰を持っている人々へアプローチすることが重要だろう。その一方法として、自らの人生を綴った自分史に着目したのである。
 自分史は執筆時点の観点で、自らの人生を再構築していくものである。その構築された自分史にキリスト教信仰が記述されているということは、その人の人生にキリスト教が何らかの意味を持っていたということになる。
14 宗教調査論・展開編−ライフヒストリーの導入に関する試論
目次 1.はじめに
2.ライフヒストリーの整理
3.先行研究の検討
 (1)教祖研究における自伝・伝記の利用
 (2)シャーマンや布教者における口述生活史の利用
4.事例へのアプローチ
 (1)口述生活史研究の応用−<牧師夫人>
 (2)自分史研究の応用−<信者周辺>
5.おわりに
要旨  「宗教集団」に関する調査法の議論が本報告書の課題だが、本稿で筆者はこの課題に、視点を変えて応えようと思う。それは、従来の「宗教集団」調査でとらえ切れない対象へのアプローチの提案という形でなされる。宗教現象をとらえるためには、もちろん研究者がその対象を「理解」しようとするわけだが、宗教現象の独自な部分をどのように考えていけばいいのだろうか。これに対して筆者は、以前、宗教調査を広義の社会調査として考える立場で議論し、ライフヒストリー法の導入を提案したことがある[川又 1997]。本稿はその議論をより具体的に展開させる形で構成される。すなわち、自らのライフヒストリーを用いた研究を、一部ではあるが提示して、宗教研究にいかに効果的に導入できるのかを検討していこうというのである。
13 <牧師夫人>が抱える諸問題に関する一考察−当事者たちの実態調査を中心に
目次 1.本稿の課題
2.<牧師夫人>という語彙の問題
3.それぞれの<牧師夫人>像
4.当事者たちの調査
 (1)日本バプテスト連盟
   @教派の概要A調査の概要B主な質問項目
 (2)日本基督教団
   @教派の概要A調査の概要B質問項目
5.考察
 (a)プライバシー (b)<牧師夫人の就業と家計> (c)老後 (d)役割葛藤
6.まとめと課題
要旨  本稿で筆者は自らの<牧師夫人>への生活史調査を踏まえた上で、日本基督教団および日本バプテスト連盟に所属している<牧師夫人>自らが実施した質問紙調査の結果を、筆者なりに整理し直した。そして<牧師夫人>たちの問題を改めて問い直し、プライバシー・就業や家計・老後の生活・役割葛藤などの諸問題を見出した。とくに老後と役割葛藤は両調査において<牧師夫人>たちの重要関心事かつ未解決な問題であることが判明した。
12 信仰の境界線−キリスト教の『信者』類型を中心に
目次 1.本稿の視点
2.キリスト教を取り上げる意義
3.「信者」類型の提案
4.3つの事例
 (1)資料としての自分史
 (2)事例 A断続信者 B受洗した信者周辺 C棄教者
5.若干のまとめと今後の課題
要旨  本稿の目的は、信者自体が少ない日本のキリスト教研究に新しい視座を提示することである。これまでは教会に通う熱心な信者への調査が中心だった。だが、人口の1%と言われる信者の現況を鑑みて、基本的には文化的受容が中心である日本では、教会外の人々もとらえる必要があると思われる。そこでまず、信者という概念自体を検討した。その際、「信者・信者周辺・棄教者・接触者」という類型を提示し、さらに信者にも断続・継続のパターンがあり、信者周辺にもキリスト教の場合には受洗の有無で分けた。
 そして、対象者自身の意図が強く反映している点を生かせる資料として「自分史」を扱い、信者周辺や棄教者などの信仰生活を3例ほど概観した。教会を離れたり、教会に通わずとも、クリスチャンとの自覚のある人たちもいることが判明し、この研究を深化させる方向性が示せた。
11 大衆長寿社会における自己表現の方法−自分史と<受葬>にみる
目次 1.本稿の課題
2.自分史にみる自己表現
 (1)自分史と「第二の生産者」
 (2)自分史友の会
 (3)プライバシーを語ることについて
3.<受葬>にみる自己表現
 (1)生前に考える死後
 (2)継承者なき葬送
 (3)墓碑に託すもの
 4.まとめ
(キーワード) 自分史、受葬、大衆長寿社会
要旨  ライフヒストリー研究で中心的に用いられてきた口述生活史と同様に、自分史も価値ある資料だということを、両者の比較により主張した論考。前者は対象者と研究者の対面的相互作用により編まれた個人史で、そのなかに研究者の視点が埋め込まれている。後者は、表現の稚拙さなどでは欠点を持つが、逆に対象者自身の思考が強く示され、研究者は量的に扱ったり、口述で補充をしたりといった工夫でより多角的考察が可能となると言えよう。
10 昭和十五年の荒川区の宗教世界−『教会講社』資料にみる
目次 1.はじめに
2.資料の特徴と背景
3.資料の分析
 (1)宗教の種類
 (2)型式
 (3)代表者
 (4)信徒
4.宗教地図
5.おわりに
要旨  あまり知られていない昭和十五年作成の「教会講社」資料を用いた考察。宗教団体法で宗教団体とは認定されなかったいわゆる新宗教や民俗宗教などの宗教結社について、筆者が5年間民俗調査を行った荒川区内に限定して概観した。その結果、仏教系の宗教結社は信徒数が多いが、神道系結社は信徒数も少なく、代表者は女性が多く学歴も低いなどの特徴が判明した。またその結社のなかで現在も続いているものはほとんど見られなかった。
09 ライフヒストリーの資料論−口述生活史と自分史の比較検討を中心に
目次 1.本稿の射程
2.用語の整理
3.口述生活史−資料の扱い方と方法論的課題
4.自分史研究−二つのアプローチ
5.大久保の問いに対する回答
6.結び
要旨  ライフヒストリー研究で中心的に用いられてきた口述生活史と同様に、自分史も価値ある資料だということを、両者の比較により主張した論考。前者は対象者と研究者の対面的相互作用により編まれた個人史で、そのなかに研究者の視点が埋め込まれている。後者は、表現の稚拙さなどでは欠点を持つが、逆に対象者自身の思考が強く示され、研究者は量的に扱ったり、口述で補充をしたりといった工夫でより多角的考察が可能となると言えよう。
08 現代学生の宗教意識−1995〜97年のアンケート分析
要旨

 3年間にわたって大学生・短大生・専門学校生へ質問紙調査を行ったものの分析。応募者は、第三節「宗教の一致及び超常現象などの比較」を執筆した。そして、学生たちにとって「家の宗教」という概念がそれぞれ異なる捉え方をしていることや、創価学会や天理教などの新宗教は、「家の宗教」と家族員個々の宗教が一致しているが、「家の宗教」を仏教としても個々の宗教を仏教と認識している者は少ないことなどを指摘した。

07 教会墓地にみるキリスト教受容の問題−日本基督教団信夫教会の事例を中心に
目次 1.序
2.本稿の課題
3.死者儀礼の問題整理
4.教会墓地の現況
5.日本基督教団信夫教会の事例
 (1)歴史・社会的背景
 (2)牧師の指導と墓地建設
 (3)信徒の実態
 (4)小括
6.結び
要旨  本論文では、まず郵送法の教会墓地調査から、その平均像を見い出した。また指導者たちの保持意識として、「キリスト教会として」あるいは「信徒の実際的な要請への応答として」墓地を欲することを抽出した。そして典型例として一教会の事例研究から、「家の宗教」でなくてもキリスト教信仰を守れる現代では、墓地を家族の施設ととらえる者が多く、信仰の継承が強制されず、教会墓地が積極的に受容されない実態などが判明した。
06 <信徒周辺>の信仰生活−キリスト教信徒の自分史を資料として
目次 1.問題の所在
2.自分史という資料の特徴
3.キリスト教信徒たちの自分史
 (1)対象選択・基本属性
 (2)類型
 (3)教会生活を続けた信徒
 (4)教会を離れた「信徒」
 (5)小括
4.結語
要旨  従来の信徒研究で考慮の外だった、教会に所属していない人々も含めた「信徒周辺」を対象に、自分史を資料に考察した。対象は「教会生活を続けた」「教会を離れて信仰を持っていた」「信仰を棄てた」という三つに分類した。教会を離れる理由として、結婚・進学などの環境の変化、教会内外の人間関係などが見出され、さまざまな信仰生活の諸相が観察された。教会外の自称「信徒」の生活を見出せたことが特に重要であろう。
05 宗教調査論・序説−調査者とインフォーマントとの関係を中心に
目次

1.なぜ宗教「調査」を問題にするのか
2.宗教調査の特徴
3.調査論の現在
 (1)調査方法の選択
 (2)調査者とインフォーマントとの二者関係
 (3)記述と公表
4.小括

要旨  これまで宗教研究の中であまり論じられてこなかった「調査」に注目し、特に面接法を取り上げ、調査者とインフォーマントとの二者関係を中心に論じた。そして、この二者間には政治性と倫理の問題があることが確認された。その次善の解決法として、面接中はもとより、その後の記述や公表に際してのインフォームド・コンセントの徹底を示唆した。記述については、ライフヒストリー法を提案し、多元的方法による調査も主張した。
04 幼稚園における宗教教育に関する予備的考察
目次 1.問題設定
2.宗教教育に関する先行研究の検討
3.幼稚園の歴史と現況
4.事例
 (1)荒川区内の幼稚園の歴史と現況
 (2)各幼稚園の概要
5.小括
要旨  宗教教育に関する先行研究は多いが、専ら小学校以上が対象となっている。だが、宗教立の幼稚園は多い。実際、キリスト教に最初に触れたのは幼稚園だと答える者もいる。そこで本論文では、今後「幼稚園における宗教教育」を追究する前段として、荒川区内の宗教立の幼稚園(すべて仏教)とその他の幼稚園とを比較分析した。その結果、行事において仏教的な行事を取り入れている以外は、他の幼稚園とあまり変わらないことが判明した。
03 ライフヒストリー研究の断層−特に方法論に関して
目次 1.問題の所在
2.ライフヒストリーとは何か
3.論点
 (1)対象設定
 (2)面接の現場
 (3)分析と記述
 (4)公表
4.今後の課題
要旨  日本の社会学では、1970年代後半から特に個人を対象とした研究法として「ライフヒストリー法」が提唱されている。だが、同様にライフヒストリーを用いている民俗学・人類学との学際的議論は見られない。本論文では、「対象の設定・面接の現場・分析と記述・公表」という4つの実際的な場面における、各分野での議論を検討した。その結果、対象の選択に関する議論が少なく、対象と研究者との共同作業により編まれることや、公表の際にも問題が残されていることが確認された。
02 キリスト者の先祖祭祀への対応
目次  はじめに
1.キリスト教受容の障害
2.先祖祭祀へのキリスト者の提言
3.先祖祭祀の変容
4.事例と考察
 むすびにかえて 
要旨  従来の実証的キリスト教研究では、戦後日本の社会変動に伴い、「先祖祭祀」の実態が大きく変化していることを考慮していない。そこで、本論文ではそのことを具体例を挙げて指摘した。そして、伝統的「イエ」に適合した「先祖祭祀」と、近親物故者への「死者祭祀」に区分して、それぞれがキリスト教信仰にとって問題になることを確認した。その上で、東北地方各県の幾つかの教会での問題を検討した。
01 死者儀礼のキリスト教的意味付け−大森めぐみ教会の事例より
目次 1.問題の所在
 (1)研究目的
 (2)研究対象と方法
2.指導者たちのキリスト教的意味付け
 (1)岩村牧師の場合
 (2)他の教会・教派の牧師の場合
3.大森めぐみ教会会員調査分析
4.個別事例分析
 (1)儀礼(葬儀・記念会等)
 (2)家庭内宗教施設(仏壇・祭壇等)
 (3)家庭外宗教施設(墓地)
 5.考察
要旨 キリスト教信徒が「死者儀礼」をどのように考え行動しているのかを、東京都の一教会を事例に考察した。質問紙調査で、家の宗教・家庭内外宗教施設・宗教儀礼に関して問うたところ、3割が仏壇を保持し、教会墓地以外に墓地を保持する会員世帯も7割を占めた。そこで、仏壇・墓地に関する個別面接をしたところ、故人の信仰を重視して仏壇を保持したり、先代からの寺院墓地を守る気持ちを持つ信徒が少なからずいることが判明した。

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