第4回研究会の記録

 ■ご案内■  7月の研究会のお知らせです。
 次の研究会を、7月13日(学会大会の2週間後!)に修士論文発表会という形で開催いたします。お一人は社会福祉学、もう一人は宗教心理学からのアプローチです。時間の制限もあり、修士論文全部ではなく、メインテーマを踏まえた上で、豊富な事例を紹介していただき、参加者が共通理解をした上で、今後のそれぞれの研究のために議論していきたいと思っております。

[日時] 7月13日(土) 14:00〜18:00
[場所] 駒澤大学(第一研究館、1階会議室)
    正門受付(守衛室)に当日の会場地図を準備しております。
[交通] 東急田園都市線(旧新玉川線)「駒沢大学」駅下車徒歩12分
[注意] 駒澤大学は現在東口・北門(通用門)に通じる大学専用道路を工事中です。そのため、正門をご利用頂くほかありません。これまでより約5分程度駒沢大学駅より遠くなります。次のHPをご覧下さい。
    http://www.komazawa-u.ac.jp/akusesu/index.html
 なお、30分以上と時間は少々かかりますが、JR渋谷駅(東急プラザ前)から等々力行きの東急バスが出ております。このバスに乗車して“駒沢”バス停(“駒沢大学駅”バス停の次)で下車されますと大変便利です。
  渋谷発 発車時間(土曜) 13時05分、20分、35分、50分

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松本 浩幸氏
 (東洋大学大学院社会学研究科福祉社会システム専攻修士課程研究生)
 「『主の十字架クリスチャンセンター』と『べてるの家』にみる精神障害克服の物語の生成される場に関する一考察」

[発表要旨]
  近年、精神障害者に対する法律や行政サービスは、整いつつあるが、彼らに対する社会的偏見は根強いし、障害そのものの課題は公的なサービスを駆使しても、すぐに改善されるとは考えにくい。そこで、精神疾患を霊的な攻撃と考えているカリスマ派キリスト教会の「主の十字架クリチャンセンター」と日本キリスト教団浦河伝道所に精神障害者の作業所がある北海道の「べてるの家」に注目し、精神障害者に対する公的なサービス以外のサポートについて、それらの事例を中心に、キリスト教と精神障害の関係、また、個人の精神的健康とそれを取り巻く人々の関係について、文献、インタビュー、参与観察によって考察した。
[文献]
 川村邦光『幻視する近代空間』(青弓社、1990年)。
 アーサー・クラインマン『臨床人類学』(大橋・遠山・作道・川村訳、弘文堂、1992年)。
 池上良正『悪霊と聖霊の舞台』(どうぶつ社、1991年)。

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松島 公望氏
 (東京学芸大学大学院連合学校教育学研究科博士課程)
 「あるプロテスタント(ホーリネス系)教会における日本人クリスチャンの宗教性深化(発達)過程モデルの構成およびその検証」

[発表要旨]
  本研究は、あるプロテスタント(ホーリネス系)教会における日本人クリスチャンの宗教性深化(発達)過程モデルの構成およびその検証を行うことを目的に、研究T〜Vを行った。
  研究Tでは、Glock(1962)と杉山(1993)における『宗教性』と作道(1983等)における『宗教的社会化』に基づき、7人の神学生を対象に、2年半に渡り面接調査を行い、宗教性深化(発達)過程モデルを構成した。
  研究Uでは、欧米における宗教性に関する尺度項目(680項目)と日本における宗教意識尺度項目(3709項目)を概観し、これらから宗教性尺度試案を作成し、ホーリネス系教会の牧師と信徒を対象に、この試案を実施し、宗教性尺度を作成した。
  研究Vでは、研究Uで作成した宗教性尺度を用い、研究Tで日本人クリスチャンに適用するために構成した宗教性深化(発達)過程モデルの検証を行った。
[文献]
 Glock,C.Y. 1962 “On the study of religious commitment”.Religious Education Research Supplement,57,98-110.
 作道信介 1983「入信過程に影響を及ぼす心理学的諸要因の検討」『日本心理学会第47回大会発表論文集』782. 
 杉山幸子1993「宗教心の多元性について−性、年齢、入信後年数による検討」『社会心理学研究』,9(1),13-21.

  お問い合わせは 小川順敬(mailto:junkei@komazawa-u.ac.jp) もしくは 川又俊則(mailto:tk@toshi-k.net)まで


【概要】

『あるプロテスタント(ホーリネス系)教会における日本人クリスチャンの宗教性深化(発達)過程モデルの構成およびその検証』

 松島公望

 本研究は、あるプロテスタント(ホーリネス系)教会における日本人クリスチャンの宗教性深化(発達)過程モデルの構成およびその検証を行うことを目的に、研究T〜研究Vを行った。
 研究Tでは、Glock(1962)と杉山(1993)における『宗教性』と作道(1983,1984a,b,1986a,b)における『宗教的社会化』に基づき、7人の神学生を対象に、2年半に渡り面接調査を行い、宗教性深化(発達)過程モデルの構成を行った。まず、各事例の個人史を作成し、その個人史から得られた結果と宗教的社会化(作道,1986)に基づく宗教性深化(発達)過程モデルから、事例における宗教性深化(発達)過程モデルを構成した。次にそれらの個々の宗教性深化(発達)過程モデルに共通する部分を整理し、モデルの検証を行うための共通する宗教性深化(発達)過程モデルを構成した。また、共通せず個々の宗教性深化(発達)過程モデルにおいて独自に現れている部分を整理し、その特徴を明らかにした。
 研究Uでは、アメリカにおける宗教性に関する尺度項目と日本における宗教意識尺度項目を収集、分類し、宗教性尺度第一案を作成した。さらに、宗教性尺度第一案の妥当性を得るために、ホーリネス系教会の牧師と信徒を対象に、宗教性尺度第一案による調査を行い、その結果を基に、項目分析と尺度構成を行い宗教性尺度第一案の精緻化を行い、宗教性尺度を作成した。また、研究Uで作成した宗教性尺度の安定性を検討するために、再検査法を行い、その結果、高い信頼性が得られた。
 研究Vでは、研究Uで作成した宗教性尺度を用い、研究Tで構成した宗教性深化(発達)過程モデルの検証を行った。宗教性深化(発達)過程モデルは、@前救い段階、A救い段階、Bきよめ段階の3つの段階に分割し、各段階においてモデルを検証した。検証の結果、幾つかの問題点はあったが、宗教性深化(発達)過程モデルは支持された。しかし、横断的研究だけでは限界があり、細部で、どうしても捉えきれない部分が生じてしまうことも示された。このことから事例研究と数量的研究を相補的に行うことによって、宗教性の深化(発達)過程をより多面的に捉える必要があることも示唆された。

【質疑応答】
質問:今回のモデルは直線的なモデルであるが、宗教性の深化は直線的なものだけなのか。そのことも含めて、モデルの構成については今後どのように展開していくのか。

回答:宗教性深化(発達)は、決して直線的になるものではないのは自分としても理解している。後退するときもあるなど、様々な展開が考えられる。しかし、今までこのような研究はなかったのでまず第一歩として今回のようなモデルを構成した。今後は、そのようなことも踏まえて、一つ一つ検討していきたいと考えている。その時は、今のような直線ではなく、螺旋状になるかもしれないなど工夫していきたいと考えている。


【概要】

「主の十字架クリスチャンセンター」と「べてるの家」にみる精神障害克服の物語の生成される場に関する一考察

  松本 浩幸

 平成14年度の精神保健福祉行政の市町村移管に見られるように、精神障害者に対する公的な法律、行政サービスは、整いつつある。しかし、まだまだ、社会的偏見は根強いし、障害そのもののこれらの課題は公的なサービスを駆使しても、すぐに改善されるとは考えにくい。そこで、公的なサービス以外のサポートについて、特に、精神疾患を霊的な攻撃と考えているカリスマ派のキリスト教会の「主の十字架クリチャンセンター」と日本キリスト教団浦河伝道所に精神障害者の作業所がある北海道の「べてるの家」に注目することにした。
 今回の発表は、キリスト教と精神障害の関係、また、個人の精神的健康とそれを取り巻く人々の関係を「主の十字架クリスチャンセンター」と「ベテルの家」の事例を中心として、文献、インタビュー、参与観察によって考察した研究の報告である。
 前半では、事例研究の対象の一つとした近年、教勢を伸ばしている「主の十字架クリスチャンセンター」の実態とその創設者へのインタビューによるライフヒストリーを取り上げ、その教会の教勢については、キリスト教年鑑などを元に表にまとめ示した。また、教会の構成員の体験談である「あかし」134事例を表およびグラフにまとめ分析した。そのなからさらに、精神障害を克服した語り手の15ケースについて分析した。また、ある信徒の精神障害の克服について医療人類学的、ライフヒストリー的アプローチを試みた。その信徒の病克服の過程の特徴は、パニックになったときに、牧師夫妻から「預言してください」と言われ、「心がぐちゃぐちゃにもかかわらず、預言をするとけろっと良くなる」という経験を何度かしていることである。波平は、「ユタ」の病気治療の研究の中で、周囲の人々にとって脈絡のない「意味不明のこと」を見たとか聞いたとか周囲に告げる人がいる場合、ユタを中心に、周りの人々がそれを排除したり放置したりするのではなく、自分達にとって了解可能なものへと誘導する行為がみられるという。また、治療儀礼はそのような個人の中に閉ざされた体験を、より多くの人々の間に解放し共通の体験とするための方法を組みこんでいるという。その事例では、「ユタ」の治療構造と同じ構造が働いていたと考えられる。また、「こころがぐちゃぐちゃ」なままの言葉を受けとめてもらえる場がそこには存在していたことも内なる否定的な現実をから肯定的な現実に換える契機になったと考えられる。ある症状を「悪霊からの攻撃」や「神のわざ」と意味づけること自体が、将来への展望につながり、治療的機能をもち、意味ある体験として自己受容されやくなっていた。また、感情的な結びつきや自己を物語ることを通して、共通の状況を作り出してきた社会に対する抵抗を生みだし、これまで付与されてきた自分たちに対する否定的価値を受け入れる必要がないことを実感をもって手にしていた。
 後半では、「べてるの家」の実態を記述し、2001年に製作・販売された「べてるの家」自主企画ビデオ『シリーズ 精神分裂病を生きる』(四宮鉄男編集)(全10巻)をもとに、「べてるの家」のメンバーの「語り」の様子を分析した。分析のために、第2巻の「妄想篇その2、ヒーローたちの戦い」を文字に起こして、資料として作成した。そして、その中の「語り」の中で自らの病体験を語っている清水氏と鈴木氏の「語り」を再構成し、その場面のビデオを上映し、自らの病をどのように克服してきたのかを医療人類学的、ライフヒストリー的に考察した。  
 べてるでは、経験を書きなおす場がミーティングの場になっていた。
 最後に、「経験が作り替えられ生み出される場」とはどのようなものかを考察した。 自らの体験を語れる場と自己を物語ることの関係を整理し、障害を持つ人々の「語り」がどのような意味を持っているのかを検討した。その結果、彼らの集う場自体が彼らの「自己を肯定する物語」に支えられる過程で生み出されてきていた。自己を物語ることのできる場を持つことで<差異を持つ者の自覚>とその上での<差異の肯定>を提示した。その上で彼らは、逸脱した行動をする者をことさら問題化しそれを否定的なものと位置づけてきたのは、生産性重視の近代能力主義であることを示してきた。このことは、能力の意味の再定義や人間であることの再定義を意味する。また、彼らの生み出した「語り」により「もう一つの現実」が多くの人々を魅了し、教会や事業を発展させてきたことも明らかになった。今後も「語り」と「語る」ことのできる場とその可能性を検討していきたい。

質疑応答
1.(資料だけでなく)実際にフィールドに入って、調査をしたのか。
―「主の十字架クリスチャンセンター」、「べてるの家」に行きインタビューをしてきた。

2.「べてるの家」では、「神」、「キリスト」といった言葉がメンバーの間で日常的に交わされているのか。
―それはない。信徒のメンバーもいるがそうでないメンバーも多い。

3.「主の十字架クリスチャンセンター」と「べてるの家」の特徴はなにか。
―「主の十字架クリスチャンセンター」は、悪霊(病)との対決的姿勢が「べてるの家」では病との和解的姿勢が特徴。

4.「主の十字架クリスチャンセンター」を対決的姿勢と言い切ることはできないのでは。(現状を受け入れている信徒の様子から)和解的姿勢もあるのでは。
―確かにそういった面もある。

5.(「べてるの家」のビデオのミーティングの場面を見て)メンバーの病は軽いほうなのか。個々のメンバーの発言がはっきりしているので。
―そうでもない。昨年訪問時に入院中のメンバーも何人かいた。


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