《 2000年・社会学後期 》 「人生と宗教の社会学」

 全11回のスケジュール     

   1回 本講義後期の説明
       −内容・スケジュール・文献リスト−
   2回 写真観察法レポートで学ぶ社会学的視座
   3回 人生の社会学(1)
       −生への医学の関与−
   4回 人生の社会学(2)
       −死の哲学−
   5回 人生の社会学(3)
       −高齢化社会における自己表現−
   6回 宗教の社会学(1)
       −信者とその周辺−
   7回 宗教の社会学(2)
       −信仰体験談と新宗教−
   8回 宗教の社会学(3)
       −インターネットと宗教−
   9回 宗教の社会学(4)
       −ナショナリズム・ファンダメンタリズム−
   10回 宗教の社会学(5)
       −近代日本の仏教とキリスト教−
   11回 宗教の社会学(6)
       −オウム真理教jとマインド・コントロール−
 


社会学後期・第1回 

【テーマ】 人生と宗教の社会学
※ふだんはあまり深く考えない、生と死をめぐるさまざまな状況の変化(脳死・臓器移植・安楽死・高齢化・ホスピス)などを現代社会を軸に考察する。とくに1990年代に大きく変化した「死」をめぐる変化をしっかりおさえたい。
※「宗教」と聞くとうさんくさく思えてしまうのは何故だろう? じつは、我々が身近に思っている「占い・おみくじ・自己啓発セミナー・ヒーリングなど」を、研究者たちは宗教現象と見なしているのだ。一方で、一般的には、教団宗教に対してはマスメディアの情報をそのまま受け入れ、嫌悪感さえ抱いてしまっている。現代の宗教社会学の最前線の議論を分かりやすい事例を踏まえて概観し、冷静に「宗教」や「信仰」を考えてみよう。
 【スケジュール】  略
 【テキスト】
  大谷栄一・川又俊則・菊池裕生編著
  『構築される信念−宗教社会学のアクチュアリティを求めて』
  ハーベスト社、2000年、2600円
 【参考書】
  文献リストで紹介。
 【リアクションペーパー(RP)】
  毎回、講義の最初にB6版のレポート用紙を配布。講義中、数回質問したり、講義最後に課題を出す。それへの応答を書くための用紙。講義終了後、提出。


社会学後期・第2回 


1.社会学的視座とは何か
 ・現代社会のさまざまな現象に対して、複眼思考を持つ/他者の視点を確保する
   →本日の「写真観察法」RP
 ・方法の3類型
   観察帰納法・・・ベーコン、コント、デュルケム他
           経験主義、具体・一般、観察認識、帰納法、検証可能 
   仮説演繹法・・・デカルト、ポパー他
           合理主義、抽象・普遍、仮説認識、演繹法、反証可能性
   意味解釈法・・・ディルタイ、ウェーバー
           理念主義、特殊・個別、意味認識、解釈法、了解可能性

2.写真観察法とは何か
・日本大学文理学部後藤範章助教授(都市社会学・地域社会学)が提唱する方法

3.前期レポートについて
・現代都市を象徴的に表すと考えられる場面を写真におさめ、適切なテーマ(タイトル)を掲げ、社会学的な言説で300字程度で解説を加える課題
 (1)講評
 (2)テーマ
 (3)場所

4.写真観察法レポートの詳細

 テーマ 160点中
 1.公園(11点)
 2.電車(9)
 3.ゴミ問題、携帯電話(8)
 4.渋谷、行列(6)
 7.放置自転車、コンビニエンスストア、公衆電話(5)

 場所
 1.渋谷(26点)
 2.新宿(20)
 3.吉祥寺(12)
 4.立教女学院短期大学内(7)
 5.横浜、自宅周辺 (6)
 7.池袋(4)

優秀作品  
 @サービスの競争−コンビニを真似した銀行
 AWhere is 公衆電話?−ケータイ電話の普及−
 B病院、そこは集会場−高齢化社会の現実
 Cもうひとつの100円ショップ−新刊雑誌のリサイクルショップ
 D三鷹台公園のオジサン−父親の「役割」− 
 E都会の日常−見慣れてしまった小さな風景−
 F宇宙界隈
 Gゴミ問題対策の落とし穴−いいことをしているつもりが、法律違反?!−

 同じテーマ
 @行列
 A1宣伝策略の甘い罠−行列から見る真相−
 A2日本の風潮−陳列状態のごとし−
   ←吉祥寺のシナボン

 C1美味しいものを求めて−行列のできるお店−
 C2商店街vsデパ地下
   ←吉祥寺の肉のサトウ

 A都営バス
 B1東京を走るCMバス−隠された効果−
 B2動く広告

 B放置自転車・ゴミ問題
 D放置自転車−分かっちゃいるけどやめられない!?
 E核家族化によるゴミへの影響−網をはられたゴミ−

【参照文献】
後藤範章 1997「<まなざし>に込められた社会的意味の解読−写真で語る:『東京』の社会学」
  『学叢』(日本大学文理学部)59。
後藤範章 2000「集合的写真観察法−都市社会調査の新地平」
  『社会学論叢』(日本大学社会学会)137:23-42.
今田高俊・友枝敏雄編『社会学の基礎』有斐閣Sシリーズ、1991年
塩谷正憲『社会学教室203にて』八千代出版、1990年、2800円。


社会学後期・第3回 

人生の社会学(1)−生命の誕生

0.社会学について・・・
・情報的知識と反省的知識のうち、後者のスタイルに接すること。
・社会学は研究する側と研究される側が基本的に同じ。
・社会学ではたえず、自分がそれについてどう考え、どう行動してきたかが問われる。
 →野村[1992他]

1.科学の到達点
 ・誕生「以前」から死「以後」まで管理される状況
 ・治療と欲望の間の境界線をどこに引くか

【RP1】@〜Cを知っていますか? 【RP2】どのような問題があると思いますか?
@遺伝子組み替え Aクローン(分枝系) B遺伝子治療 C人工授精・体外授精

2.生命の誕生について
 (1)体外授精・人工授精 ※不妊夫婦は10組に1組
 体外授精・・・卵巣から卵子を取出し、培養液の入った試験管内で受精させる処置
       日本では1983年〜。年間1万人以上誕生。
 人工授精・・・精液を人工的に女性の性管内に注入し、妊娠せしめる処置
1940年代後半〜。AID(夫以外の精液)だけでも、年間1万人以上誕生。
 顕微受精・・・顕微鏡を用いて卵子に精子を直接注入する方法
 代理母・・・妊娠できない女性のため、別の女性が妊娠、出産すること。

 ○ 不妊症カップルに子供を持つ可能性を開いた
 △ 親子関係。子供の人権。←「生みの母」「育ての母」「遺伝上の母」
   取引される卵子・精子・受精卵  相続の秩序
   技術上・安全上の問題(体外受精の流産率は40%/通常15%)
 ×予防医学と結びつくと、選別がおこる ←生命の尊厳とは・・・

 (2)遺伝子診断・産み分け
 @遺伝子診断
  出生前診断    染色体異常などの検査可
 A男女の産み分け  ○ 遺伝病回避、親の希望  × 自然の摂理に反する

 (3)その他
 @陣痛促進剤
  「お産を楽にするため」←→火曜日の午後の出産が多いのは何故?
 Aシングルマザー
  子供は産みたいけど・・

3.サイボーグ
 (1)人体改造
さまざまな人工物

 (2)薬・ドーピング
  19世紀末にのアスピリン →全世界では33兆円
  人間の全遺伝情報(ヒトノゲム)の解読のデータを活用した薬の開発へ

【参照文献】
日野原重明『現代医学と宗教』岩波書店、1997年、1500円
毎日新聞社会部医療取材班『いのちがあやつられるとき』情報センター出版局、1993年
森岡正博『生命観を問いなおす』ちくま新書、1994年、660円
野村一夫『社会学感覚』文化書房博文社、1992年
野村一夫『社会学作法・初級編−社会学的リテラシー構築のた
       めのレッスン(改訂版)』文化書房博文社、1999年


社会学後期・第4回 

人生の社会学(2)−死生学

1.死生学(thanatology)とは何か
  米:1963〜(ミネソタ大学、フルトン教授)、69〜死の研究所設立
  独:1970年代半ば〜(中高校で「死への準備教育」

2.アルフォンス・デーケンと死の哲学
  1970年代後半〜 死の臨床を考える会
  1975〜「死の哲学」「生と死を考える会」A・デーケン哲学科教授(上智大学)
 ・死の準備教育の4レベル   知識・価値観・感情・技術
 ・IC(インフォームド・コンセント) 欧米90%上 日本20%未満

3.生と死の境界
(1)脳死と臓器移植
 心臓死・・@心停止、A呼吸停止、B瞳孔散大、の3大兆候
 脳死・・・脳損傷のため脳浮腫ができ、脳幹部が圧迫され、脳の機能と脳血流が停止
       した状態(自発呼吸なし、約10日前後に心停止)
  法律上 a)深昏睡 b)自発呼吸の消失 c)瞳孔散大固定 d)脳幹反射の消失
        e)平坦脳波 f)この5つが、6時間経過して変化なし
 植物状態・・自発呼吸が有、血圧維持が可能。脳幹反応が有、脳波が残る
  ← 生命維持装置(人口呼吸器含)
【輸血】
 ハーヴェイの心臓ポンプ説→血液型の発見 神聖な血→単なる機械の一部
【臓器移植】
 《海外》南アで67年に初の心臓移植
     米は71年に脳死判定の基準、83年に脳死で死の定義を統一
     英は76年に脳死説、仏は88年に脳死で統一
     蘭の88年資料では腎移植で遺族の拒否は4割
 《日本》68年和田移植 84年筑波大学の移植 →裁判の結果無罪
     74年に脳の判定基準→85年竹内基準 92脳死臨調の答申
     97年臓器移植法案可決 99年初の臓器移植実施
  移植の前提条件:a)生存中に<ドナーカード>など書面での意志表示
   b)告知を受けた配偶者、子、父母等二親等以内の家族・遺族の承認
   c)脳死での死亡時刻は2回目の判定時 d)判定医師は2人以上
   e)15歳以上 f)対象は、心臓・肝臓・肺・腎臓・膵臓・眼球・小腸
     00年改正をめぐる動向(@小児への適用、A家族のみの承認)
【問題点】
 臓器移植と脳死との密接なつながり ←医師・医院への不信感
a)ドナーへの適切な治療は? b)レシピエントが適切に選ばれているか?

(2)献体
   正常解剖・病理解剖・司法解剖 死刑囚→墓あばき→献
   日本は、49年死体解剖保存法制定 遺体は誰のものか?

(3)ホスピス
 19世紀アイルランドでその原型誕生
 1967年、ロンドン郊外の聖クリストファー・ホスピタルが現代の形の嚆矢
 大阪の淀川キリスト教病院 浜松市の聖隷三方原病院など

(4)尊厳死・安楽死
   1976年、米カレン事件
   尊厳死:末期患者が自発的に延命処置を拒否して、自然のままに死ぬこと
   安楽死:医師が末期患者に薬物などを投与して死なせること
  →苦痛の緩和・除去
【日本の事例】1949、61年の親を安楽死(青酸カリ、農薬)では、有罪(執行猶予)

(5)臨死体験
 @やすらぎと幸福感 A体脱現象 B暗い場所の滞留と通過
 C光につつまれる D神などとの対話 E瞬間的な回想 F故人との再会
 G境界線を前にしての帰還 H死への恐怖や不安の消失

参照文献
G.ゴーラー『死と悲しみの社会学』宇都宮輝夫訳、ヨルダン社、1986年、2000円
近藤誠他『私は臓器を提供しない』洋泉社、2000年、660円
宮家準『生活のなかの宗教』NHKブックス、1980年、757円
鈴木康明『生と死から学ぶ』北大路書房、1999年、2400円
竹内一夫『脳死とは何か』講談社ブルーバックス、1987年、580円


社会学後期・第5回

 人生の社会学(3)−高齢化社会における自己表現

1.東西の死生観
(1)古代エジプト文明(他)とキリスト教的死生観
(2)アジアと日本 ※岸本英夫 死への工夫(不老長生の薬、死後、子孫・作品、今)

2.<受葬>にみる自己表現
(1)生前葬 (2)継承者なき葬送 (3)墓碑に託すもの

3.自分史とは何か
(1)定義 自伝・自叙伝=功成り名を遂げた人々の回顧録。有名人による立志伝的記録。
     自分史=名もない庶民が書く個人的記録
(2)自分史の特性
 自分史は筆者が自ら執筆・公表
  ○能動性・自発性・直接性
  ×内容の限定。関係他者のプライヴァシー →読者への配慮 自費出版→部数少
 自分史へのイメージ(いずれも朝日新聞の川柳)
「自分史はへりくだりつつ自慢する」93.9.5「別人のような自分史できあがり」93.11.2
「自分史の人に知られぬ薄化粧」94.5.19「自分史の粉飾決算花ざかり」95.3.12
「人生のカミングアウト」[小林]
 自分史を書く動機:他者へ・自己へ→年齢を超えた、自己の経験を秩序づける行為

4.自分史ブームとその実態
(1)歴史的背景
  橋本義夫の「ふだん記」運動(1968-)、後藤総一郎の遠山常民大学(1977-)
(2)現況
  民間カルチャースクールでの自分史講座
  北九州市の「自分史文学賞」(90-) 日本自分史学会(93-) 
  自費出版図書の収集・閲覧機関 「本の渡り鳥」 学校教育
(3)自分史友の会
  福島、栃木のサークルの現況

5.戦争体験談の現在
 (1)戦争体験談とは何か
   戦争体験「戦争の時期において戦争に原因のあるすべての状況の経験を含む」
 (2)『孫たちへの証言』から
 (3)記憶の共同体について

【参照文献】
藤井正雄他編『家族と墓』早稲田大学出版部、1993年、3592円
橋本義夫『だれもが書ける文章』講談社現代新書、1978年
川又俊則「大衆長寿社会における自己表現の方法」『現代社会学研究』12巻、1999年
小林多寿子『物語られる「人生」』学陽書房、1997年、1900円
鯖田豊之『火葬の文化』新潮選書、1990年、922円
鈴木政子『自分史』日本エディタースクール、1986年、1700円
横山宏編著『成人の学習としての自分史』国土社、1987年


社会学後期・第6回

 宗教の社会学(1)−信者とその周辺

『構築される信念』 第一章「信者とその周辺」について

1.クリスチャンはどこにいるのか
  文化的受容と宗教的受容の差異
  日本におけるキリスト教受容の困難:「家の宗教」との関係、先祖祭祀
  これまでの「熱心な信者」研究の限界

2.信者とは何か
 《 分類の基準  》「信者」であるかどうかを「客観的基準」と「主観的基準」で区分
   admission
   入会=ある宗教集団の一員となること。教団から成員と認められること
  conversion
   入信=信仰を持っていなかった者が、ある特定の宗教を信仰するようになること
   改宗=ある特定の宗教への信仰を棄て、他の宗教を信仰するようになること
   回心=宗教的に新しく生まれ変わり、当事者の心身が変容すること

 《 「信者」類型 》 →テキスト17頁のチャート
  信者=ある宗教集団において、入会と入信を兼ね備えた者
     A)継続信者・・・教会で中心的な役割を担っている信者
     B)断続信者・・・一時教会を離れたような信者
  信者周辺=入会・入信の一方が欠けている、もしくは双方とも途中である者
     C)教会(or教団)内信者周辺・・・教会を渡り歩く者
     D)教会外信者周辺・・・教会に通わない信仰自覚者
  非信者=信者および信者周辺以外の者すべて
     E)接触非信者・・・(キリスト教系)学校経験者、棄教者など
     F)非接触非信者・・・他の宗教の信仰者など

3.事例
 (1)継続信者 牧師・主婦・教員・会社経営者などの執筆者たち

 (2)断続信者、信者周辺、非信者 →テキスト23頁のライフコース
  本章「H」の断続信者(1930年生まれ女性)
  本章「G」の教会外信者周辺(1922年生まれの女性)

 (3)考察 →テキスト28頁の信仰グラデーション
  教会外でも信仰を守っているとの自覚ある人々の発見

4.まとめ
 従来はA〜Cを「信者」としつつ、実際はAのみ扱った ←→ 本論文はB〜Dへ着目
 クリスチャンをABに限定するか、CDまでを認めるかで異なる
 より多角的な視座からの研究へ 一方で、この類型が他宗教で妥当かどうかの確認

参照文献 
池上良正『悪霊と聖霊の舞台』どうぶつ社、1991年、1942円
森岡清美『日本の近代社会とキリスト教』評論社、1970年、1553円
大谷・川又・菊池編著『構築される信念』ハーベスト社、2000年、2600円


社会学後期・第7回

 宗教の社会学(2)−信仰体験談と新宗教

『構築される信念』 第二章「物語られる『私』(self)と体験談の分析」について

0.宗教の常識
 A.世界の宗教   世界宗教・民族宗教・原始宗教  排他主義・包括主義・多元主義
 B.日本の宗教
  神道1億2000万人、仏教8900万人、キリスト教150万人、その他1000万人
   cf)韓国 仏教1085万、新教809万・旧教262万 4分の1がキリスト教信徒
 C.宗教法人
  18万余(文部大臣所轄が1000未満、他は都道府県知事所轄)、宗教団体は約23万
  多くの優遇措置
 D.マスコミと宗教  蓮門教事件、イエスの方舟事件
 E..年中行事としての宗教  クリスマス、正月、など
 F.新宗教  天理教系 大本系 霊友会系 その他
 G.新新宗教  1970年代以降、にわかに台頭してきた新しい新宗教
 H.キリスト教系新宗教
  末日聖徒イエス・キリスト教会(通称モルモン教)
  エホバの証人(ものみの塔聖書冊子協会)  統一教会(世界基督教統一神霊協会)、など

1.信仰体験談とは何か?
  体験談=教団内で行われる活動の一環
  一般の信者が語る「体験談」は、理解しやすい平易な表現形式を備える物語
  誰にでも実感されやすい様々な苦難や災難からの救いの物語

2.本章の概要
 第1節 はじめに
 第2節 自己物語論的アプローチの問題圏
    1 「自己物語」(self-narrative)としての体験談  2 自己を物語ることへの着目
    3 物語の構造への着目 4 自己物語論的アプローチの問題圏 −コンテクストへの着目−
 第3節 自己物語論的アプローチの実際 −真如苑「青年部弁論大会」を事例に−
    1 調査対象と目的 2 自己物語の再編とコンテクスト (1)事例1 −「家庭集会」での出来事−
      (2)事例2 −部長とUさんの衝突−
 第4節 小括

3.要点
・物語ることによる「新たな自己の構成・維持」=当の体験それ自体を経験として〈現実〉化する
・語り手である弁士しか語りえないはずの弁論が、多くの他者の解釈を組み込みながら再構成され ていくにもかかわらず、最終的に出来上がった原稿が「真正な」「自分らしい」ものとして、聞き 手にのみならず語り手本人にも認識されていくというメカニズム
  「良い子である自分」→「高慢である自分」
・コンテクストが、自己の再編をめぐるその影響力において決定的に重要
・課題と可能性:自己啓発・癒しを目的としたセミナーやワークショップ・セルフヘルプグループ に代表される語り合いを主軸にした心理療法など、多くの類似の活動に有効なアプローチ
 
参照文献
井上順孝『新宗教の解読』ちくま文庫、1993年、1000円
石井研士『データブック現代日本人の宗教』新曜社、1997年、2400円
石川純一『宗教世界地図』新潮文庫、1997年、362円


社会学後期・第8回

 宗教の社会学(3)−インターネットと宗教

『構築される信念』 第四章「現代のメディア・コミュニケーションにおける宗教的共同性−キリスト教系メーリングリストの場合−」について

0.構成される自己−自己啓発セミナーの事例を中心に
 前回の続き・・・自己は構成される話
 赤黒ゲーム
 変身劇
 諸問題

1.インターネットと宗教の現在
 テレビ伝道 パット・ロバートソン他
 インターネットの普及 各宗派の利用
 日本の事情  その問題点

2.CMCと宗教−第4章の概要
 (1)CMC(Computer-Mediated Communication)とは何か →用語解説
  時間に制約or時間を超える、空間に制約されるor空間を超える
  一対一、一対多、多対多

 (2)方法論その他
・ラテン語「集まること religare 」を語源する宗教 religion における、個人を超えた直接的な経験や対話への強い揺り戻し
・ジョージ・サーサス(Psathas, G. P.)の「事例の方法」(method of instances)
・トランスクリプトが自動的にシステムによって「ログファイル」(ログ)として残ることの利点

 (3)事例−キリスト教系ML
・仮名ファミリーMLにおける998年9月〜99年7月までの約1年間のやりとり
 メンバーは18〜25名
・参加のやりとり
・完結的投稿と非完結的投稿
・現実生活との関わり
 電子コミュニティは共通の関心のみによって結ばれる「情報縁」の場
(1)時間に制約されないメディアを用いながら、時間に制約された、同時的なコミュニケーションを志向している。
(2)定期的に投稿される説教のような完結したまとまりをもつメッセージよりも、日常生活の私的な話題を盛り込んだ「祈りの要望」などが、活発なやりとりを持続させている。(3)参加者の私的な問題へのかかわり方については、現実生活と同等のコミットメントが求められる。
・まったく「新しい」宗教の形態であるとは必ずしも言えないが、現代社会のなかで失われた宗教的共同性を自覚的に再構築するという営みの一側面

参照文献
二澤雅喜・島田裕巳『洗脳体験(増補版)』宝島社文庫、1998年、582円
芳賀学・弓山達也『祈るふれあう感じる』IPC、1994年、1000円
生駒孝彰『インターネットの神々』平凡新書、1999年、660円


社会学後期・第9回

 宗教の社会学(4)−ナショナリズム・ファンダメンタリズム

『構築される信念』 第五章「ナショナリズムとモニュメンタリズム」
            第六章「グローバル化とファンダメンタリズムの諸相」について


1.ナショナリズムとは何か?
 ※個人の最高の忠誠が国民国家に対するものであると感じる心的状態
 ・パスポート、オリンピック
 ・近代的理念
 エスニシティの要素
  @集団に固有の名前、A共通の祖先に関する神話、B歴史的記憶の共有
  C集団独自の共通文化、D特定の「故国」との心理的結びつき
  E集団を構成する人口の主な部分における連帯感

2.モニュメントとしての慰霊碑
  記念碑(monument)・・・「思い出させる」を意味するラテン語monereに由来
 (1)英国の慰霊碑
  @ 第一次世界大戦(The Great War)と戦没記念碑建設ブーム
    74万5000人の英国軍兵士戦死者(全軍隊の10%)
      →戦没記念碑の総数は54000以上
  A 沈黙の儀礼−戦没兵士追悼記念日(Remembrance Day)
      →11月11日にもっとも近い日曜日に実施
       ツー・ミニッツ・サイレンス:大英帝国のアフリカ領から
  B 戦没記念碑の多様性

 (2)日本の慰霊碑
  戦没記念碑建設の画期となったのは日露戦争
  各地に慰霊碑→靖国神社建立

3.ファンダメンタリズムとは何か?
 ファンダメンタリズム・・・ある文化的伝統において、そのアイデンティティの構成にとって本質的であると見なされるものを設定し、そこへの回帰という名目でその伝統を純化し、内的なものであれ外的なものであれ、それを脅かすものを排除するという仕方で、その文化的伝統を改革せんとし、それを実現するためには、政治や社会倫理への(時には暴力的な)介入を行おうとする傾向。

 (1)イスラム教について
・キリスト教と同じ一神教。西暦622年〜
・六信(アッラー・天使・啓典・預言者・来世・予定)五行(信仰告白・礼拝・喜捨・断食・巡礼)
・サダト暗殺(81年10月6日)、ラビン暗殺(95年11月4日)

 (2)エジプトの事例
 サラフィー主義(非イスラーム的添加物を除去)→ムスリム同胞団(1928〜)
 →世俗的ナショナリスト・ナセルの革命(1952)→第3次中東戦争敗北(1967)
 →ナセルの死(1970)→サダト暗殺(1981)→IMF管理下(1991)
 →テロルの対象が政府高官から「非イスラーム的な」服装をしている女性、アルコール  を売る店、ヴィデオ・ショップ、神秘主義教団の祝祭などの市民社会レヴェルへ

参照文献
井上順孝・大塚和夫編『ファンダメンタリズムとは何か』新曜社、1994年、1900円
宮永國子『グローバル化とアイデンティティ』世界思想社、2000年、2300円
大塚和夫『イスラーム的』NHKブックス、2000年、1160円





社会学後期・第11回

 宗教の社会学(6)−オウム真理教とマインド・コントロール

1.オウム真理教
 (1)成立期・対立の萌芽
  84年2月 15名ほどのヨガ道場 87年7月 「オウム真理教」と改称
  89年8月 宗教法人に認証  10月より連続批判記事 11月坂本弁護士事件
  90年2月 衆院選惨敗 4月石垣島セミナー 10月阿蘇で強制捜査と逮捕
 (2)拡大期・事件
  92年秋 麻原、大学で講演
  94年春〜 他者からの攻撃を主張 6月松本サリン事件
  95年3月 地下鉄サリン事件、 6月麻原逮捕
 (3)事件後の信者たち
  95年 オウム真理教脱会者の会
  「オウム信者は、他者存在がまったく見えてこないんじゃないか。社会と接していても、
   オウムの教義なり観念なりで物事を見ているから、他者が入り込む余地がない」
  事件後入信者のインタビュー
 (4)まとめ
  若者たちの現世超越的欲求
  オウムの持つ内閉性・暴力性、「ボディコントロール」

2.マインド・コントロール(MC)について
 (1)MCとは何か?
  洗脳:長時間拘禁状態においたり、薬物を投与したりして、個人の精神構造を強制的に
      生理的に変化させるもの
  MC:他者が自らの組織の目的成就のために、本人が他者から影響を受けていることを
      知覚しない間に一時的、あるいは永続的に、個人の精神過程や行動に影響を及
      ぼし操作することい(西田)
 (2)MC
   @一時的
   【暗黙の拘束力】
     a)返報性
     b)コミットメント
     c)好意性
     d)稀少性
     e)権威性
   A永続的
    情報の管理:閉鎖性、自由の拘束、思考の誘導、ゆがんだ情報処理
    感情の管理:外敵回避、離脱の恐怖、自己カテゴリー化
    行動の管理:賞と罰、自己知覚、厳しい行動
    剥奪と生活管理:単調な生活、異性感情の抑制、肉体疲労(睡眠時間他)、切迫感
 (3)離脱
   @離脱パターン 自力発見、幻滅、追放、逃亡、外部介入、強制離散
   A離脱後の状況
    人間不信、関係修復の困難、「浦島太郎」状態、身体的健康を害する、etc

参照文献
 カナリアの会編『オウムをやめた私たち』岩波書店、2000年、1800円
 西田公昭『マインド・コントロールとは何か』紀伊國屋書店、1995年、1400円
 島薗進『オウム真理教の軌跡』岩波ブックレット379、1995年、388円
 島薗進『現代宗教の可能性-オウム真理教と暴力』岩波書店、1997年、1500円 


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